
早朝、とあるパチンコ店。誰もいないその場所で、一人開店を待っている青年、努。そこへ、特大リーゼントの男、紀世彦がやってくる。見ず知らずの2人だったが、似た空気を感じたのか、紀世彦は”プー太郎”の努に仕事を手伝わないかと持ちかける。早速、紀世彦の家へ行き仕事へ取り掛かるのだが、その仕事というのは裏ビデオのダビング。すっかりハマってしまった努は、紀世彦の家で一緒に寝泊りするようになるのだった。
曇天、くもり空。先の見えない”どんてん生活”を、ダラダラと続ける2人だったが…。
山下敦弘監督が大学の卒業制作で制作した作品。山下監督初の長編作品ながら、多くの映画祭に出品され、海外でも評価された作品で、監督自身も「日本のカウリスマキ」「日本のジャームッシュ」などと評されています。
山下監督の長編処女作ということもあってか、やはり荒削りな印象は否めませんでしたが、それでも彼の視点とか、彼の作りだす独特の世界観は既に存在しています。日常を描く、間のとり方、カメラワーク。山下監督の原点を垣間見たような気がして、とても興味深いです。
全体的にコメディという感じは少なく、”現実的に描く”というのに徹しているような感じ。もちろん山下作品らしい”間”による笑いもありはしますが、あまりそれを狙っているような感じはしませんでしたね。山下作品の中でも、一番”現実”、”リアリズム”を感じる作品ではないでしょうか。ただ、あまりにも現実的すぎて、暗い…。いや、悲しいという表現のほうがしっくりくるかな…。序盤はまだ、「ホント、この人たちダメ人間だな〜」と、おもしろ目線で観れるのですが、中盤以降はホント悲しすぎる。
主人公を含め、その周りのダメ人間の”どんてん生活”がやたら現実的に描かれているし、全員運がないし、救いようがない…。しかも、カメラワークもやけに上手いので、殺伐とした感じとか寂しさとかがより印象強く表現されていて。
そういうの嫌いではないし、どちらかといえば好きなほうですが、まさか山下監督がこんな雰囲気の映画撮っているとはねぇ…。まぁ、私が勝手にオフビートコメディであろうと観る前から決め付けていたのが悪いのですが。
とはいえ、大学の卒業制作でこれだけのものを撮れる力があるというのはやはりスゴイと思います。個人的に山下監督は好きな監督だし、山下作品好きなので、その原点を知れるという意味でとらえれば、非常に良い作品です(ホントの原点はそれ以前の短編作品なので、機会があれば是非そっちのほうも観たいですね)。