カリスマロックアーティスト、ブレイク。彼はリハビリ施設を抜け出し、一人森の中を彷徨っている。そのまま森の中で野宿し、翌朝、廃屋のような屋敷に辿り着く。そこは彼の家。彼の家には、彼の才能、名声、金に群がる連中が常に居候していた。しかし、誰も彼のことを真に見ようとはしない。
彼の家には様々な人が訪ねてくる。彼は周りから逃げるように家を出る。そして夜。誰もいなくなった家で、彼は”Death to Birth”を演奏する。それは彼の魂の叫びだった…。
「ジェリー」「エレファント」に続く、ガス・ヴァン・サント三部作の最終作。
伝説的ロックバンド、ニルヴァーナのリーダーであるカート・コバーンの死にインスピレーションを得たガス・ヴァン・サント監督が、その最期の2日間をもとに製作しています。
私はニルヴァーナについても、カート・コバーンについても、さほど知識は持っていないので、どこまでカートのことを描いているかは定かではありませんが、「ラストデイズ」は純粋に1本の映画として素晴らしいものだと思います。
「描く対象を絞る」「セリフは最小限にとどめる」「情報はシンプルに伝える」。そのどれもが前2作から引き継がれ、精度が高められており、一切のムダがありません。特に映像美は素晴らしく、今までのもの以上にセンスが感じられます。”観客の感覚”に多くを委ねるようなあの映像表現は、そう簡単に成しえるものではないでしょうね。
”時間軸のズレ”も印象的。これは「エレファント」でも見られましたが、「エレファント」のときとは違い、”複数の人の視点”で時間軸をズラすのではなく、主人公の視点で時間軸をズラしているような印象が強いです。これは主人公ブレイクの不安定な精神状態とオーバーラップしているような感じがあり、自分自身がブレイクと感覚を共有しているような、不思議な感覚を生み出しています。一度観ただけでは全てを理解できないところも、このような感覚に拍車をかけます。
ストーリーは一見何も無いけど、実は全然ムダがありません。虚しさや何かモヤモヤしたような、言葉では言い表せない感じの表現が秀逸。”Death to Birth”を演奏するシーンはとても印象的。今まで何も語らなかったブレイクが、何かを吐き出すように、訴えるように歌う…。泣ける。
他にもまだ言いたいことはありますが(配役や映画の作り方とか最高)、もうホント、全てが良い。でも、万人に薦めることができる映画でないのは確かではありますが。一応「ラストデイズ」で三部作が終了することになりますが、ガス・ヴァン・サント監督には、ぜひこのような素晴らしい作品を撮り続けて欲しいと思います。