ジェリー

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ジェリー デラックス版

二人の若者が砂漠のドライブの途中に、車を降りる。二人の名前は不明だが、彼らはお互いを「ジェリー」と呼び合い、ダサい物事や行為も「ジェリー」と呼ぶ。軽い散歩のつもりか、小道を無造作に歩き始めた二人だったが、気づいた時には、荒野で道に迷うという危機的にジェリーな事態に陥っていた。深刻な様子も無いまま、友達同士のたわいもない話を続けながら歩いていくが、二人は次第に事の重大さに気づいていく。美しいほどに過酷な自然の中を3日3晩さ迷ったのち死に直面した彼らを待っているのは…。

2003年カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「エレファント」。本作「GERRY」は、その原点ともいえる作品。

「GERRY」は、映画が始まった瞬間から、その特異さに気づかされます。人物の説明が一切されず、何故車を降りたのか、どこに向かおうとしているのか、一切の説明がなされません。
道に迷ったことに気づいても、初めは気にも留めない二人。1日目が過ぎ、2日目になっても道に迷ったまま。そして二人はしだいに焦りをみせ、体も限界が近づいてくる…。カメラは静かに二人を追い、二人を見つめ、何も無い風景をただただ写すのみ。ワンカットが数分にも及ぶシーンが幾度も見られ、その美しい映像に吸い込まれる。見終わった後、ふと映画のことを思い返すと、美しい映像と恐怖を感じさせる空虚感がジワジワと染み渡ってくるような、不思議な作品です。

しかし、映像があまりにも静的過ぎ、冗長に感じてしまうのも事実。人物すらいない風景や、雲が流れるだけの空を延々と写し続けるカットを見続けるのはさすがに辛い。ただ、色の変化や砂の動き、雲の動き、微かな音など、映像が何かを象徴していたり、表現している感じがあり、それが監督がやりたかったことだとも思うので、そこを完全には受け入れきれない自分が歯がゆくもあったり。

出演はマット・デイモンとケイシー・アフレックのみ(一応エキストラ的な人も出はしますが)。マット・デイモンは近年ハリウッド映画に完全に移行してしまった感があり、あまり好きではなかったのですが、こんな静かな映画でも浮かず、とても自然なので驚きました。ただの筋肉俳優じゃなかったのね。

以下ネタばれ含みます。

終盤、体力の限界に至り、砂漠で倒れこむ二人。その時、何故かケイシーがベンに絡み、そして何故かベンは縺れ合うままにケイシーを殺害します。このシーンでもセリフは一切なく、お互い満足に体が動かない上に、離れた場所から固定カメラで撮っているのでよく状況が把握できません。ネット上のレビュー等を見てみると、殺した理由は異なるにしろ、ベンがケイシーを殺害したということで意見は一致しているようです。ただ、私はそこに疑問を感じます。

ベンはケイシーを殺害した後、ケイシーの横に寝転びます。その後カメラは空を数分間写し、また二人に焦点を戻します。ここでの二人の態勢がどうも引っかかります。カメラが空を写す直前と後とでのケイシーの態勢が異なっているのです。どちらかというと、縺れ合う前の二人の態勢に似ています。ケイシーは殺害されているので自分で態勢を変えることは出来ませんし、ベンも疲労で体を動かすのも困難なので、わざわざケイシーの態勢を変えるわけがありません。ケイシーはこの場所で倒れこむ前の段階で、幻覚を見るまでに疲労していました。なので、ベンもこの段階で幻覚を見ても不思議ではありません。これはあくまで私個人の考えですが、あの殺害シーンはベンの妄想だったのではないかと思います。”友人を楽にさせる”という思いのために見た、殺害という妄想。

「エレファント」で他人による死を描き、「ラストデイズ」で自身による死を描いたガス・ヴァン・サント。 その2作の始まりにあたる「GERRY」では、”誰も手を下さない死”を描いたと考えたほうが自然な感じもしますし。
ただ、「GERRY」は結構前に観たので、この”態勢が違う”という事自体が私の思い違いの可能性もあるので、 あまり気にしないでください…。

「エレファント」にしても「ラストデイズ」にしても、そしてこの「GERRY」にしても、ガス・ヴァン・サントは自ら映画の”核”を語らず、見る者に考えさせるようにしている感じがあります。そしてその考えるためのヒントとして、”映像”による表現が用いられているようにも思えます。観る人により感じ方が違い、観た時により感じ方が違う。ホント、深い。

製作
2002年
アメリカ
監督
ガス・ヴァン・サント
出演
マット・デイモン
ケイシー・アフレック

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