1986年、10月23日。ソウル近郊の農村で若い女性の裸死体が発見された。その後も同じ手口の連続殺人事件が相次いで発生。現地には特別捜査本部が設置され、地元の刑事パク・トゥマンとソウル市警から派遣されたソ・テユンは、この難事件に挑む。
性格も操作方法も異なる二人は対立を続け何度も失敗を重ねながら、ついに有力な容疑者を捕らえるのだが…。
1986年から1991年の間、実際に韓国で起こり、現在でも未解決となっている連続猟奇殺人事件をもとにした作品。一見するとサスペンスのようですが、実際は人間の内面を鋭く捉えた重厚なヒューマンドラマでした。
監督を務めるのは、本作が長編2作目となるポン・ジュノ。長編1作目にあたる「ほえる犬は噛まない」では、コメディの中にも人間性や社会性を描き、デビュー作とは思えないその実力を見せ付けられたわけですが、 「殺人の追憶」でもその力は健在。むしろ、コメディ性を排除した分、人間の心理描写や社会性の表現は数段レベルが上がっているという印象を受けました。
昔気質で横暴な捜査を繰り返すパク刑事。ソウルから派遣され、”アタマ”を使った独自の捜査を行うソ刑事。正反対な性格・捜査方法の2人は当然ぶつかり合いも多く、お互いに皮肉りあいながら捜査を進めるわけですが、一向に犯人の有力な証拠が見つからず、その間にも次々と殺人が起きることで、2人は徐々に、精神的に追い詰められていきます。この間の心理描写が上手い。追い詰められれば追い詰められるほど冷静になっていくパク刑事。逆に、追い詰められれば追い詰められるほど暴力的になっていくソ刑事。難航する捜査に対する憤りや焦り、葛藤、そして悔しさ。脚本や演出の上手さもあってか、これらの心理描写はより生々しく、リアルです。
他にも、泥臭くて廃れた感じの映像や、良品な音楽、緻密に練られたであろう脚本。そして熱演。もうどこをとってもケチをつける場所が見当たりません。すべてにおいて非常に完成度の高い作品だと思います。