バンドブーム吹き荒れる頃の東京。4人組のロックバンド“SPEED WAY”もブームに乗ってメジャーデビューを果たしたが、パっとしない活動が続き、メンバーの生活は何も変わらないままだった。今日も彼らは、狭苦しいスタジオで練習し、居酒屋でロック談義に花を咲かせる。ギタリスト・中島は、売れる曲を書けと迫るボーカルのジョニーと言い争うが、どうしてもいい曲が書けない。そんな時、中島のアパートに“ロックの神様・ディラン”が現れ、ハーモニカの調べで語りかけて来る…。
ロックに真っ向から向き合ったアメリカ映画「スクール・オブ・ロック」。自身もロッカーであるジャック・ブラックを主演に添え、ロックの真髄とは何かを訴えかけた映画ですが、「アイデン&ティティ」はその日本版ともいえる映画。こちらも同じくロッカーである峯田和伸が主演。ロックとは何かを捜し求めるような映画となっています。「スクール・オブ・ロック」とは違い、「アイデン&ティティ」はより現実的な視点から描かれています。
いわゆる”イカ天”時代が主となっているわけですが、ホント描き方がリアル。ブームが去って次々にバンドが消えていく中、大衆に好かれる音楽に方向転換しまくり器用に生き残っている奴の存在とか。”売れる歌”と”歌いたい歌”の違いも見事。「あー、たしかにそんな歌のほうが売れる」と思えて仕方がありませんでした。主人公の存在も良い。”売れるための曲”を作ることに抵抗があり、レコード会社の社長にも反発したりするのですが、売れる曲を作らないと食っていけないので、理想を捨てるかどうかで苦悩したり。
峯田さんを起用したのは大正解でしたね。自身もバンド「GOING STEADY」を解散したばかりという時期にあり、今後の音楽性の面などで考えるところがあったと思われますが、そういう背景が、主人公・中島が苦悩する姿とオーバーラップしていて、非常に感じるものがあります。他のメンバーも見事なキャスティング。いかにもバンド。いかにもバンドキャラ。一人もぶれることなく、本当にぴったりと合ったベストキャスト。最高。
ただ、”映画”としてはどうか、というとイマイチという感があるのも事実。ダラダラと長い。言葉による説明が多い。ナレーションで語らせるのが本当に必要なのかわからない。
特に気になったのは、ロック以外の要素が多すぎ。ファンの女の子と寝るとか、特に多すぎ。その系列で彼女との関係とか。最終的に「ロックは愛である」的な表現がなされるので、その流れ上仕方ないのかもしれませんが、それを差し引いても多すぎます。もっとバンドの苦悩、ロッカーの苦悩、商業主義や、ファンのロックに対しての軽さ、などを描いて欲しかったですね。予告編を観る限りではそっちで押してたわけですし。
と、気になる点を挙げましたが、生放送で暴走するシーン、あそこで何もかもどうでも良くなりました。アレがロックですよ!ああいうのが見たかったんです!もの凄くロックで、もの凄くカッコ良くて、もの凄く会場も沸いているのに、放送を中止するテレビ局。まさに真のロックと商業主義ロックとの溝。私が「アイデン&ティティ」に求めていたのはコレなんですよ!
が、この後もまだダラダラと続くんですよね。映画。この生放送シーンが一番の盛り上がりポイントであるのに、この後もダラダラ続けてはシーンをつくるので、いくつもエンディングを見せられた感じがします。確かに彼女との関係とか、ディランとの関係とか、いろいろと消化しなければならない(私はそうは思いませんが)部分が残されており、続けざるを得なかったのかもしれませんが、個人的には、生放送シーンで切るのが一番ベストだったと思いますね…。
散々書きましたが、こういう映画は貴重ですし、もっともっと観たいですね。それこともっと現実的に、もっとエグく作っても良いと思いますよ(まぁ、それこそ商業主義の世界では嫌われることになるのでしょうが)。