アメリカ西海岸ヴェニスビーチ周辺、通称ドッグタウン。この見捨てられた町で育ち、スケートボード明け暮れる3人の少年達、トニー、ステイシー、ジェイ。溜まり場にしていたサーフ・ショップを中心にスケートチーム”Z-BOYS”が結成され、ますます彼らのワイルドなスケーティングに磨きがかかる中、立体的なスケーティングができる”空っぽのプール”こそが彼らの聖域となる。そして全米のスケート大会に出場し、突如としてメインストリームに登場した彼らは、その革新的なスタイルで若者達を熱狂させ、瞬く間にスーパースターになっていくのだが…。
実在したスケーティングチーム、”Z-BOYS”をテーマした作品。
「ロード・オブ・ドッグタウン」は、”人”に優れた映画だと思います。
まず、Z-BOYSの中心だったトニー、ステイシー、ジェイが製作に参加したこと。ステイシーは自ら脚本を製作し、トニーとジェイは映画にカメオ出演しています。ジェイは彼を演じたエミールと実際に生活を共にしたとか。彼らが製作に関わったことで、映画に本物のリアリティと説得力を与えたことは言うまでもないでしょう。オリジナルメンバーであるステイシーが脚本を製作したにも関わらず、自分たちのことを美化したりドラマティックに脚色したりせず、嫌な部分もさらけ出したり、ありのままの現実を描いたという点にも注目です。
また、配役も最高。トニーを演じるのは2004年度のインディペンデント・スピリット・アワードにノミネートされたヴィクター・ラサック。ステイシーを演じるのは「エレファント」に出演し、初出演とは思えない演技力で注目を浴びたジョン・ロビンソン。ジェイを演じるのは「イノセント・ボーイズ」で内外から高い評価を受けたエミール・ハーシュ。
初めはジョン・ロビンソンが出演しているということで観始めたのですが、エミール・ハーシュ!カッコ良すぎです!チームよりも富や名声を選んだトニーやステイシーと違い、最後まで”ドッグタウン”を貫き通したジェイ。そんなジェイを演じたエミールですが、もうジェイが乗り移っているとしか思えないような迫真の演技。苦悩、葛藤、憤り、そして狂気にも似た感情。これらを見事に表現しています。試合でハンドプラントを披露するシーンや、頭を丸刈りにするシーンにはかなりシビれました。ジェイ自体がカッコいいというのがあるのかもしれませんが、エミールが演じていなかったらまた違う印象になってしまっていたでしょう。他にも、3人を結びつけるシドを演じたマイケル・アンガラノは演技力抜群だし、ドッグタウンの少年達の教祖的存在スキップを演じたヒース・レジャーはめちゃくちゃキレてます。トニーを買収するトッパーを演じたのは「Jackass」でおなじみのジョニー・ノックスビルだし。ジョニー・ノックスビルいたらパンクにならざるを得ないでしょう。
監督は「サーティーン あの頃欲しかった愛のこと」で、2003年サンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞したキャサリン・ハードウィック。メイキング等を観るとわかるのですが、彼女のスケートボード、Z-BOYSに対する愛情、尊敬はハンパじゃありません。話している間中常に興奮しています。彼女の熱烈な愛情があったからこそ、70年代のアウトローを見事に再現した演出や迫力あるスケーティングシーン、丁寧な人物描写、そして絶妙な配役が生まれたと言っても過言ではないでしょう。
と、いろいろ書きましたが、理屈抜きにして、とにかくカッコ良すぎな映画。めちゃくちゃパンクで、熱くて、汚くて。それなのに、深くて丁寧に作りこまれています。スケートボードやZ-BOYSに対する愛情と共に、映画に対する愛情も感じられる最高の1本です。