母とささやかに暮らしていた二人の兄弟のもとに、12年間家を出ていた父親が帰ってくる。
二人は父親とともに旅行に出かけることになるが、どうしても父親の存在を受け入れることができない次男は反抗を強めていくのだった…。
2003年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞したロシア映画。
「父、帰る」は、とにかく、重い。12年ぶりに帰ってきた父を理解することができない次男。12年ぶりに会う息子たちに威圧的に接する父。長男は父の記憶があるため、「父」という存在を容認することができるのですが、次男には父の記憶がまったくないため、「父」という存在を受け入れることができません。だんだんと反発を強めていく次男に対し、父も威圧的な態度をとり続けるため、自体はどんどん悪化していきます。この状況が、見ていて非常に苦しくて、怖い。また、映画の中には、父に関するいくつかの謎がでてくるのですが、その謎の答えは一切明かされません。そのせいで、次男が父に対して思っている感情、「こいつ何者なんだ」を、観客側も感じることとなり、より息苦しさが倍増します。
このような状態のまま、衝撃的なラストへとつながっていくのですが、そのシーンが、胸を締め付けるように痛い。ネタばれになるので詳しくは書きませんが、そのシーンで父の本音というか、本心というのが垣間見えます。今まで何かを隠すように威圧的な態度をとっていたということがはっきりと感じられるので、とてもやるせない気持ちになるのです。
本作は、ストーリーだけでなく、映像も非常に高いセンスを感じます。どこか「暗さ」を感じさせるような映像の美しさは、なぜかロシアらしい気がします。この映像美が、暗くて重いストーリーを、さらに深いものへと仕上げています。
非常に良い映画なのですが、少し疑問が残る点もあります。それは、「長男」です。この長男、父を尊敬しているのか嫌っているのか、どうもはっきりしません。あるシーンでは素直に怒られ、納得しているかと思えば、別のシーンでは悪党呼ばわりしてみたり。人物設定のしっかりしている父や次男と比べると、どうも長男はストーリーの帳尻あわせのためにうまく利用されているようにみえてしまいます。なぜ父に対する態度が変化するかをもう少しだけわかりやすく描けてもらえたら、そんなことは思わなかったのでしょうけど。
まぁ、でも、「父、帰る」は、久しぶりに他の映画と一味違うということを感じることができる作品でした。 ロシア映画を見たのは本作が初めてなのですが、今後もぜひ注目していきたいと思います。